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平成18年11月 |
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◆「先代萩」 沖の井 |
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もちろん初役です。まさか自分が沖の井を勤めるとは思ってもいませんでした。この年になって経験したことのない片はずしの真女形の役に挑戦できるのは、自分の可能性を広げる意味でも大変ありがたいことだと思っています。しかも今回は「竹の間」
が出るので沖の井は重要な役です。こころして勉強し、せっかくのチャンスを無駄に しないように努力したいと思っています。 |
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◆「源太」 |
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東京の本興行では初めてになります。なんともいえずいい踊りですが、きりっとしたなかにも柔らかさがなければならず、また戦物語から廓話へのなめらかな変化も要求される、なかなか難しい踊りです。若い頃には手も足も出ませんでした。この頃ようやく、30年前に三津蔵師匠に教えられたことが分かるようになってきました。色気があって滑らかで、なんとも言えぬ味わいのある世界。そんなものが舞台に漂えばいいな、と思っています。今回は「先代萩」の序幕で頼兼が紫の同じような衣裳を着るので、三代目の錦絵にならい、藤色の着付にしようと思っています。 |
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◆「願人坊主」 |
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まったくの初めてです。父が昭和55年の第1回「登舞の会」で復活した踊りです。
そのときは「源太」「老女」「願人坊主」の3段返しで、「源太」は私が勤めていました。六代目菊五郎が初演して人気舞踊になった清元の「うかれ坊主」の原曲です。
六代目は常磐津の「願人坊主」を清元になおし、さらに清元の「納豆売」の一部を付け加えて、新しく「うかれ坊主」としたのです。それが人気曲となり、この常磐津の原曲の方は忘れ去られていたものを、父が復活したという訳です。ですから今回歌舞伎の本興行での上演は、おそらく江戸時代の三代目三津五郎以来になるのではないかと思われます。「源太」との変わり目を鮮やかに、「うかれ坊主」よりややリアルに汚い、「願人坊主」ならではの味わいを出したいと思っています。 |
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◆「鶴亀」 鶴 |
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素踊りで亀を勤めたことがありますが、歌舞伎の舞台では初めてです。ほとんど謡曲から採った歌詞なのでまことに格調の高い踊りです。その分砕けた面白さには欠けるので、ひたすら品良く、立派な大きさのある舞台にしたいと思っております。京屋さんのお元気さにあやかれるよう、おそばでそのパワーを感じ、学びとりたいと思っております。 |
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◆「河内山」 松江出雲守 |
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何度か勤めておりますが、正直に言ってあまり気分の良い役ではありません。お数寄
屋坊主にしてやられ、最後に「馬鹿め」と言われるのですから・・・・・・。ただ自分も河内山を勤めたことがありますが、この松江出雲守の存在が大きくないと、河内山はやりにくいのです。なんと言っても18万石のお大名。普段なら親しく口をきくこともできない相手です。その雲上人のところへ単騎乗り込んでいくところが、この芝居の醍醐味ですから、安っぽい松江侯では困るのです。この芝居の登場人物のなかでは桁外れに身分の高い人、という事を忘れずに、成田屋さんのお相手を勤めたいと思っています。 |