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平成19年11月 |
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◆ 高安 俊徳丸 |
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偽りの恋であったのか、本物の恋であったのか・・・。それは玉手御前を演じられる役者さんによっての解釈ですが、いずれにしてもその恋に値する魅力ある存在でなければいけないことに変わりはありません。技巧よりも、まずその存在自体が光っていなければならず、超美男子ではない私にとっては難しい役です。歌舞伎の中にはこうした役がたまたまあります。義経などもそうですが、技巧が目立ち過ぎると役が老けてしまう。何もしていないように見えて魅力的に見えなければいけないという、無技巧のうちの技巧が要求される難役です。この芝居に出ることも初めてですが、この機会に多くのことを学び取り、さらに自分の引き出しを増やしたいと意欲を燃やしております。 |
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平成19年10月 |
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◆「封印切」 八右衛門 |
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まったくの初役です。この芝居に出たこともありません。「近松心中物語」では忠兵衛を500回以上勤めましたが、歌舞伎の方ではブラジル公演で「新口村」の忠兵衛を勤めて以来です。お家の芸である坂田藤十郎兄さんの忠兵衛を相手に大阪弁でポカスカやりあい、また、次第に忠兵衛を煽っていかなければいけないので大変です。しかもセリフも、はっきりとした決まりごとがある訳ではなく、アドリブの要素が強いのでなおさらです。しかし努力して乗り切れば、またひとつ自分の可能性、武器が増えることになるわけで、せっかくのチャンス無駄にせぬよう勉強いたします。 |
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◆「怪談牡丹灯篭」 三遊亭円朝 馬子久蔵 |
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18年前の平成元年6月に当時の孝夫兄さん、玉三郎さんでこの芝居が上演されたとき、私は宮野辺源次郎を勤めておりました。その月の25日に尾上松緑のおじさんがお亡くなりになられたので、はっきりと覚えております。その後この「牡丹灯篭」は、私が伴蔵を4度勤め、すっかり持ち役とさせていただき、円朝、馬子は中村屋さんの持ち役でした。ですからご覧になる皆様の印象も中村屋さんのイメージが強いと思いますので、いかに私なりの円朝、馬子に仕立て直すかが勝負だと思います。また、高座で話を語るなどという経験は初めてのことなので、楽しみながら勉強し、また円朝らしいマクラはどのようにしようかと、思案を重ねているところです。
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◆「奴道成寺」 狂言師左近 |
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4度目になります。平成9年に初めて踊ったとき、初めて本当の意味での踊る楽しさを味わった、思い出深い曲です。
その後三津五郎襲名披露で再演、こんぴら歌舞伎でもやらせていただきました。いうまでもなく、娘道成寺のパロディーとして男が演じるのがミソですが、初めの金冠をかぶった扮装は能をそのまま取り入れておりますので、ぐんと荘重さが深くなければいけませんし、それが一転狂言師の明るく庶民的な踊りに変わるという変わり目、。恋の手習いの、三つのお面を使い分けながら恋の様子を踊り分けていく技術、山尽くしの、花四天を使った所作立の華やかさなど、娘道成寺とは違った、「奴道成寺」ならではの楽しさをお客様に存分に味わっていただけますように、心して勤めたいと思っております。
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