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平成22年5月 |
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◆「摂州合邦辻」 合邦道心 |
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初役です。この場の主役はもちろん玉手御前ですが、内容的には合邦の芝居といってもよく、大変やりがいのある面白い役です。捨て坊主ながら元武士の身として、理不尽な行いをした娘を、世間を憚り怒りつつも、かわいい我が子という情愛を捨てきれない、親の心の揺れ動きが見事に描かれています。義太夫狂言としての骨法を守りつつも、そうした合邦の微妙な心情をお客様に伝えられるように努力いたしたいと思います。古靭大夫の名品や、祖父8代目三津五郎のこの役の良さなどを充分研究して、私なりに現在できる精一杯の役作りをしてお目にかけ、この一幕が現代のお客様にも通じる作品として成立するよう努力いたします。 |
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◆「河内山」 河内山宗俊 |
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4回目になりますか・・。関西で演じるのは初めてです。今回は質店がつきませんので、河内山の変わり目というより、男らしい度量の大きさ、おおらかさに重点を置いて演じようと思っています。愛嬌ももちろん必要ですが、そちらが先に立ち男の大きさが際立たなくなるのは、この役の本分から外れると思いますので、肝の据わった男の大きさと余裕が、自然に愛嬌につながってくれればと考えています。昼の部の切りですので、お客様が気分よく劇場をあとにできるように、余裕を持って明るくおおらかに演じたいと思っています。そして何より、ほくろをつけるのを忘れないようにしなければ・・・(笑) |
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◆「京人形」 左甚五郎 |
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これも4回目になります。あまり難しいことを考える必要のない分かりやすい作品なので、お客様のよき気分転換となれますよう、肩の力を抜いて、軽く明るく、楽しく演じたいと思っています。人形に魂が入って動いたり、鏡をぬくと男姿になったり、大工道具をつかった面白い立ち回りがあったりと、短いなかにも趣向が込められた、歌舞伎のメルヘンともいえる舞踊劇です。そうした理屈ぬきの楽しさを感じていただけるように、出演者一同力を合わせて臨みたいと思います。 |
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◆「髪結新三」 大家長兵衛 |
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2度目です。前回は中村屋さんの襲名公演で、手代忠七と早変わりをいたしました。ですのでご趣向という意味合いもあり、またお相手も同じ年の中村屋さんでしたから抵抗はありませんでしたが、今回は先輩の菊五郎さんがお相手で、しかも老け役の大家ひとつでの出演ですので、いささかですが抵抗があります(笑)。ですが儲けどころのある大変面白い役ですので、大阪のお客様にも江戸の世話物の楽しさを感じていただけますよう、割り切ってうんと突っ込んで演じてみようと思っています。悪党の新三でもかなわない一筋縄ではいかないふてぶてしさと、それをくるんでしまう独特の愛嬌と枯れた味わい、とんでもなく食えぬじじいだが、なんとなく許せてしまう、そんな多面性をもって演じ、この作品の大きなアクセントになれればと思っています。 |